
2021年3月28日、第34回リードジャパンカップ女子決勝。我らがクライミング界の”あいちゃん”こと森秋彩が、カンストした持久力を武器に終盤で驚異の粘りを見せつけ、見事2連覇を果たした。昔に比べ、リード、ボルダリングともに選手層が厚くなっている昨今の競技クライミングにおいて、今年1月のBJCでの優勝に続くジャパンカップ2冠は日本クライミング界の歴史に残る快挙となるだろう。
彼女の登りに着目すると、ベテラン顔負けの安定感のある登りが印象深い。幼少期から培ってきた巧みな足遣い、現場処理能力、オブザべ能力は勿論、近年重点的にトレーニングしているフィジカルトレーニングの成果か、引く力、押す力ともに数年前より格段にパワーアップしている。決勝ルートに挑む際の落ち着いた背中は、すでに新世代王者の風格を醸し出していた。
あいちゃんといえば、常にクールな仮面を被っている印象があるが、優勝時のインタビューではやや顔を綻ばせるシーンも見えた。ただ、「(決勝課題は)カッコいいルートで完登を目指していたので悔しい」とのあいちゃん”らしい”謙虚なコメントものぞかせていた。凄まじい努力と実績のわりに表立って取り上げられることが少ない選手ではあるが、多くの人々の心に小柄な彼女の鬼迫のパフォーマンスは深く刻まれたことであろう。

ともすればグレイトな登りを魅せてくれた秋彩ちゃんだけに目が行きがちな今回のLJCだが、大ベテランであり、東京オリンピック内定者でもある野口啓代の2位という成果も賞賛されるべきだと思う。女性クライマーの第一人者として10数年間現役最前線で戦い、長年に渡り有望な若手を跳ね返してきた気概のある登りは未だ健在。クライマー人生の集大成である半年後の東京オリンピックまでに、その正確無比な登りはさらに研ぎ澄まされていくであろう。
今大会注目株は3位の中川瑠、決勝トップバッターながら高度36+という結果をたたき出した新鋭。身長やリーチも野口啓代や伊藤ふたばと近い感じがするので、来年以降の成長も目が離せない。他の決勝メンバーについてはわりかし常連揃いだが、昨今のリードクライミングはランジやボリュームホールドといったボルダリング要素が多用されるようになったため、やはりボルダリングとリードがどちらも強いクライマーがLJCでも上位に来る傾向がありそうだ。

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