ホールド試作④ 3Dプリンタ

Hold making
Hold makingClimbing diary

はじめに

第4弾はピンチボード。試作③にてポリウレタンで作ったホールドを寸法そのままに3Dプリンタで出力してみようという試みになります。

3D CAD設計

思ったほど難しくはなく、2~3h程度で描けた。25cm×30cm×5cmのピンチボード。

スライサー

今回のスライスは低解像度と標準解像度の2種類を試してみた。

小タイトルは以下の形で表記。

CADモデルNo. / 試行回数 / 解像度 / 出力時間

Model1 / RUN1 / 低 / 22h

まず、通常通り出力しようとしたらプレビューで36hという膨大な時間が表示された。流石に長いだろ、、、と思って低解像度にしたのが間違いだった。

結論から言えば、造形途中で中断せざるを得なかった。
理由としては大きく2つある。

①ホットプレートと接している面が沿って寸法がズレた
②ホールドの強度がイマイチだった

以下に画像を載せていく。

10h 経過後
基板の反り
拡大図 沿っていない箇所(正常)
拡大図 沿っている箇所(異常)

10h造形していたので精神的ダメージも少なからずあったが、早めに決断が出来てよかった。

そして、次にこれらの異常の対策としてどんな手段が有効なのかを調べた。
その結果を以下に示す。

①「反り」
インターネットで検索すると、ホットプレートと第一層の密着性の低下が関係していることが判明した。反る主原因は冷却による熱収縮なので、糊などの接着剤で無理矢理固定するか、ホットプレートの温度を上げてPLAを溶融温度に近づけ、密着力を上げるかの2択となる。個人的には前者は確証が得られないので、後者一択とし、温度を45℃→60℃に上げることにした。

②「強度不足」
これは低解像度にしたことで、パッキング性を犠牲にしたためだと思われる。後から見返したら充填率が15→10%に下がっていたのでそれに由来するのと、中心部以外はハニカム構造が見られなかったことが原因だと思われる。とりあえずは時間がかかってもいいから標準の解像度に戻すことにした。

Model1 / RUN2 / 標準 / 37h

ホットプレートの温度を上げたおかげで第1層の反りは改善されたが、やはりこちらもなぜか上手く出力できず、途中からフィラメントがぐじゃぐじゃになる現象が発生した(②の強度不足だと思っていた現象)。

原因究明のため、初心に帰ってプレビュー画面のスライス画像を1層ずつ丁寧に見返していったら、下層部分にサポート材なしでのプリントが無理そうな空洞の部分が存在していた。この原因を3D CADで追及していった結果、「シェル」という機能を使う過程で期せずして指定していないと思っていた空間まで空洞になってしまっていたことが分かった。つまり、私が強度不足だと思っていた現象はこの空洞のせいであり、出力条件自体に別段問題はなかったことが判明した。これを改善し、スライサープレビューまでいった結果、空洞部が消失しており改善されたことが分かった。

Model2 / RUN1 / 低 / 16h

上記対策のおかげで今度は出力自体は上手くいったが、中盤から「フィラメント引き込みが上手くいかない」という現象が多発した。私も就寝前までは対応できたが、どうやら就寝中にも問題は起こっていたようで、プリンタヘッドは架空の積層を積み重ねており、朝起きたら下図のような状態でフィニッシュしていた。。。

原因としては現時点では3点ほど思い浮かんでいる。

①フィラメントのガイドチューブが上部カバーに擦れることで押出機との接続不良が起こった
②PLAが湿気てフィラメントが取り出しにくくなっていた(3週間ほど空気湿潤下で放置していたため)
③フィラメントを回す機能(モーター?)が長時間稼働によりオーバーヒートした

それと、稼働音に関して騒音面で気になる部分があったのでご報告。

現在、私は3Dプリンタから3mくらいの位置で寝ているのだが、朝目を覚ますと平衡感覚が少し鈍っていた。稼働音は一般的な掃除機の半分くらいで、凄く響くというわけではないのだが、長時間さらされるとやはり体に悪影響が出るようだ。後ほどメーカーの方に音の大きさ(dB値)についてと、夜間は作業を止めたいので出力中の一時停止&電源OFFについても問い合わせてみたいと思う。

Model2 / RUN2 / 低 / 16h

①~③の対策を施し、再度朝から出力開始した。

①:上部カバーを常時開放の状態にした
②:新しいPLAフィラメントに交換した(残り長さも短かったため)
③:①の対策及び部屋の窓を開けて冷却効率を上げた

フィラメントは白がなかったので代わりに青を用いた。結果として、その日の夜には無事印刷が完了した。以前の白のフィラメントと比較すると青の方が出が良かったので、湿気による印刷不良が主原因なのかもしれない。

出力完了

レビュー

取り出し後
取り付け後

造形物の完成度としては低解像度印刷だったのでまずまず。ボルト締めるときに強く締めすぎて「パキッ」て音がなって本当にビビった。しかしなんとか壁への取り付け終了。四方は予めCADで開けておいた穴でビス止めした。

壁につけると保持感としてはそこそこ悪く、チョークつけて本気で持たないと話にならなかった。中心の傾斜の部分も50°設定にしていたがとてもじゃないが持てなかったので、70~80°の方がよかったかもしれない。あとは、最大ピンチ幅が相当キツキツだったので、次回作を設計する時は注意したい。

さいごに

結構なドリーム構想であったピンチボードを作製できて非常に満足している。このサイズ感はそんじょそこらの3Dプリンタではハードのスペック的に出せないので、オリジナリティのある作品ができたと思う。次回は木板の右上と左上の余空間に正統派の縦長ピンチをつけたいと思っている。5/24~5/25の休みの間に構想を練る予定です。それではまた。


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