世界選手権、東京、八王子。オリンピック代表の座をかけて、日本人クライマーの熱き情熱がぶつかり合う!!
MEN 感想
とにかく楢崎の世界だった。スピードでも練習の成果を如何なく発揮して2位につけて勢いに乗り、ボルダリング1位、リード2位の【総合4pt】という圧倒的なスコア。全世界の強豪達にまさしく王者に相応しいクライミングを見せつけた。その圧倒的なパフォーマンスの前では、最早オリンピック日本人代表内定という栄誉はついでといってもいいだろう。
2位のヤコブもリードを中心とした安定した記録を出しているが、やはり3種目とも安定した好成績を出しきれていないのはスピードの練習環境不足ゆえか。
残念だったのはメゴス。ボルダリング第1課題でまさかの負傷。今シーズンの調子が最高レベルで、得意なリードだけでなく予選のボルダリングも全完登だったので余計に悔やまれる結果になった。怪我の程度は動画ではイマイチ分からなかったが、流石に早期の復帰は難しいか。今はゆっくり休養して、オリンピックまでに再び調子を整えてきて欲しい。
スピード1位のリシャットは、どれか1種目でも極めれば決勝に残れるという見本のような存在だった。決勝ではスピード特化かと思いきや、(ボルダーを切って)リードを第2のコアにできそうな強さが見られ、来年のオリンピックでどれくらい総合スコアを伸ばしてくるか楽しみな存在だ。
日本人選手の3人(藤井快、原田海、楢崎明智)についてはバランスよく鍛えてきたことが感じられるクライミングパフォーマンスであった。ベテランの快は安定している一方で、少しフレッシュさと勢いが足りない感じ(笑)。一方で若手の海と明智は今後1年の伸びがまだまだ期待できる。フランスのミカエルについては私はまだよく知らないので、今後注目していきたい。

WOMEN 感想
ヤーニャと野口啓代の高次元のバトル。この世界選手権の間、互いにスピード以外フル出場の疲労の中、よくここまで結果を残せるものだと感激した。ヤーニャに関してはレジェンドなので語るべくもないだろう。驚くべきは野口。あの天才ヤーニャに年々少しずつ追い付いている節がある。身体のライン、顔つきも洗練されてきて、今回も得意のボルダーで1位を掴みとるなど30歳とは思えない若々しくバイタリティある登り。普段の佇まいにもオーラを纏い始めて、王者の風格が様になっている。もう、来年のオリンピックではどちらが勝っているか分からないだろう。
注目すべきはショウナと森。怪我から見事に復帰し、すでに積年のライバル、野口に肉薄するほどのスコアを叩き出す執念、クライミングに懸けた女の人生の奔流が画面から溢れ出ており、観ているこちらも鳥肌が立つ。リードでトップクラスの成果を出している森は、来年のコンバインドでもおそらくスピードを切ってボルダーもリードの2極を主体にして勝負を仕掛けるだろう。まだまだ成長期であり、クライミングに対する飽くなき向上心を持つ彼女は1年後、どれほど成長していようか。
野中に関しては、一時はボルダーで野口を越えていたが、肩の怪我の影響でパフォーマンスが落ちてしまっているのは非常に残念。森に影響を与えた彼女のパワフルな登りをオリンピックで見られることを期待する。対して、伊藤はまだ総合力不足の印象。まだまだ伸びる素地はあると思うので、この1年間で最高の状態に仕上げてきて欲しい。
ペトラは総合8位と残念な結果だった(決勝に残るだけで凄くはあるが)。敗因は得意のボルダーで7位だったことであろう。彼女の本来の実力を発揮すれば上位に食い込む可能性は十分にある。スピードも比較的好成績なので、1年後も日本人にとって侮れない存在であることは変わらないであろう。4位のアレクサンドラは典型的スピード特化。オリンピックでメダル圏内に入るには第2のコアが欲しいところ。個人的にはスピードとクライミングは似て非なるものと考えているので、彼女のクライマーとしての成長に期待したい。

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